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2005.09.27

エコール公認!超巨大デスクリムゾン専用筐体がアジア美術館トリエンナーレに出品

 昨日、福岡市のアジア美術館で開催されている
福岡アジア美術館 福岡トリエンナーレ』 をふらりと見物に行ったところ、
会場内でなにやら聴き覚えのある不気味なベース音が…。

 ここ数日、旅先で不規則な生活をしていたので、疲れからくる幻聴かと思ったら…
わたしの想像の斜め上をいく、とんでもない作品に遭遇してしまいました。
なんじゃこりゃ??。

最初見たときは、ついに気が狂って幻覚を見たのかと思いました、いやマジで。

不思議子ちゃんと巨大クリムゾン

今回は、『福岡アジア美術館 福岡トリエンナーレ』 に出品された
角孝政(SUMI TAKAMASA)さんの作品「不思議博物館展示室A」に設置されている
巨大クリムゾン」 についてのレポートです。覚悟して読むように。

 

(なお、ここに掲載されている画像に関して。

 通常は館内撮影禁止ですが、
クリムゾナーである角孝政さんとわたしの意気投合により、
私が気合いで念写(インスパイヤ含む)したイメージ画像のみを公開しています。

 念写なので、色々霊とかコンバット越前とかヤバイ物が映っているので
画像の取り扱いには要注意してください。私は念写前後に数時間うなされました。)

 


 

 

上から見た巨大クリムゾン

 まず、一見して圧倒されるのはその大きさ。
全長3.4m、高さ2.2mのクリムゾンは、到底人間が手持ちで持てるサイズではありません。
(重さは50kg程度ということなので、猛者なら背中に背負えるかも。)
 よって、専用の3本足の台座が追加され、重機関銃のようなスタイルになっています。
さらにクリムゾンの前後バランスを取るために20kg近くあるらしい
銃底部にカウンターウェイト?(実はただのマンホールの蓋)がぶら下げられています。
このマンホールの蓋、お店で買ったら、数万円したとか。

 グリップ部分に使っているのはSSバーチャロン用の家庭用スティックをぶったぎったものです。

 

マニュアル

 操作説明&クリムゾン説明用のラベル。
素材に「デスクリムゾンソフト」と明記されています。やばいデス。

 

横面図

 横面図。「このゲームは中学生?大人向けです」との表記。
これが後で効いてきます。

 

デスサターン仕様

 巨大クリムゾン中心部にはめ込まれたセガサターン。
当然ですが、蓋&CD部分は接着剤で固定され、
D-ISM(デスクリズム)で紹介されている 「デスクリムゾン専用機」 に改造されています。
細かいネタだなぁ。

 

クリムゾン先端

クリムゾン先端部。バーチャガンのグリップ部分が切除され、
クリムゾン先端に埋め込まれて(インプラントされて)います。
バーチャガンの光学部分は、精度の問題もあって完全分解せずにそのまま使用したとのこと。
一応、マニュアルでキャリブレーションも可能ですが…しない方が無難でしょう。

 

背面図。イカス。

背面から。ひたすらイカス。

 

 で、見ているだけでもなんなので、せっかくだからプレイしてみました。
クリムゾンの操作感覚はかなり独特のものがあります。
元々、デスクリムゾン自体、くせのありすぎる操作感覚だったのが、
巨大化されたことで、さらにじゃじゃ馬な操作感覚になってます。
50kg近いクリムゾン自体の重さとバランスの悪さに加え、
動く早さや慣性を制限するダンパーやバネが全く付いていないので
リロード時に画面外でショットする動きを素早く行うとかなりヤバイ状態に。
1面前半でゲームオーバーになってしまいました。

 リロードボタンの追加や、クリムゾンのキャリブレーション改善などは全く行ってないそうです。
かなりじゃじゃ馬の操作性も含めてデス様なので、なるべく素材の味を活かしたかったとか。
TVモニターも、14型などのなるべく小さいものを使ってみたいとか。
この作者、色々わかってます。村上隆なんかとは色々と違います。
さすが、九州の現代美術は色々やばい方向に暴走しています。
いいぞもっとやれ。

 このあと、館内にいる不思議子ちゃんのプレイを見せて貰いましたが、結構上手かったです。
やはり、やり込みが上達の基本か?

 

オリジナルも展示なのか?

 館内には、セガサターンオリジナルのデスクリムゾンも展示されています。
デスクリムゾンの伝説色々や、美術作品としての製作意図の説明も。

幼児から小学生…いいのか?

ところで、こちらには「このゲームは幼児?小学生向けです」との表記が。
レーティング的にはありかもしれないけど、いいのか?

 

関連アイテム

館内に展示されているデスクリムゾン関連アイテムの数々。
デスクリムゾン2、デスクリムゾンOXはプレジデントのサイン入り作品です。
しかし、こんな企画が通るアジア美術館って、濃い場所だなぁ。


 

 で、早速、「不思議博物館」 の館内にいた館長の角孝政さんに
数十分間ほどインタビューを行いました。
というか、ひたすらデス様話などで盛り上がっていただけですけど。

 デス様的に詳しいことは、色々会場で当人に訊いた方が盛り上がると思うので
しばらくの間、ネット上には掲載しないことにします。さわりの部分だけを。

 

クリムゾンの色は、ドリキャス超限定色と同じ「マジョーラ」カラー。
日誌によると、特殊塗料の代金だけで約4万円かかっているそう。

プレジデント公認クリムゾン

 過去の作品として、小型のクリムゾンを製作、ワンフェス?で展示販売を試みたが
反響自体はさほどなかったとのこと(泣)。
 このクリムゾンをプレジデントに進呈したところ、
「データではわかっているけど、モノになると感慨深い」との感想があったとか。

 この作品は、このあとイギリスの会場でも展示されるとか。
海外にデス様布教を行うべく船便で運ばれるそうです。凄い。

 製作開始前に、気合いを入れるべく、アトリエの扉を真っ赤に塗ったそうです。
元ネタはもちろん、伝説の名台詞 「せっかくだから、 俺はこの赤の扉を選ぶぜ

 「不思議博物館展示室A」のイメージコンセプトのひとつは、
田舎の村とかにある「怪しげな私設博物館」の雰囲気だとか。
都築 響一さんの「珍日本紀行」なんかに出てくるアレな雰囲気の博物館ですね。

他にも、ビデオゲームにまつわる展示作品が色々ありますが
…今回は紹介できません。アジア美術館現地に行って体験してみて下さい。
この「不思議博物館展示室A」自体は入場無料です。
日によってはカフェ営業していて、角孝政さんやお手伝いの「不思議子ちゃん」とも色々話せます。
 角孝政さん自体はバーチャロンや鉄騎やデス様などにはまっているかなりアレなゲーマーですが
ゲーム歴はほんの3年程度だとか。正直、ありえない話です。

 


 

  最後に、現代美術とビデオゲームの関係について。

アジア美術館トリエンナーレでは、今までにも幾つか、ビデオゲームを題材とした作品が展示されていました。
中国の作家が作った、近衛兵や政治的京劇を題材にとったFPSのMODや、
ファミコンゲーム的な絵柄で天安門事件や中国の民主化弾圧などをとりあげた作品など。

 海外でも、最近だと、FPSのグラフィックエンジンを用いた
マニシマと呼称される映像作品が話題になっているという記事がありました。

 また、日本の作家で、ビデオゲームを積極的に題材として取り入れているものとして、
著名なモノではポストペットや、テノリオンエレクトロプランクトン
新しいものでは田中考太郎(dotimpact)の遅延を題材とした作品群
portable[k]ommunityの映像作品なども挙げられますし、
大阪や神戸や水戸東京(1)東京(2)などで、 TVゲームの展覧会もいろいろ開催されました。
おそらく、現在開催中の横浜トリエンナーレ2005でも、
TVゲームを題材とした作品がいくつか出ていると察せられます。

 

 しかし、デス様を現代美術の観点から捉えるという「志からして全然違う」この作品は、
あまりにもアジ美的で…見事だとしか言いようがありません。やられました。
(ただ、デス様というネタのチョイスは…本当にわかる人にしかわからないです。
そこがローカルなカルチャーを素材とする作品故の限界か。
しかし、デス様のアレゲな評価は世界中のゲーマーの間で安定しているようですし。)

…ローカルでプライベートな視点や価値観の色々な変化が、
現代美術の中で再注目されるここ数年の傾向を考えると、
デス様自体も、作品の評価として(旧:非常に複雑な歴史的経緯)
非常に複雑な歴史的経緯を辿っているだけに、
伝説のゲーム「デスクリムゾン」がこのような形で2005年に再び取りあげられたのは
必然としか言いようがありません。感慨深いものがあります。
やはり元作品のポテンシャルのなせる技かと。

 この巨大クリムゾン自体、
村上隆的な「仕掛け感」や最近のマスメディアで捉えられる歪んだ視点の「秋葉原系」情報とは違い、
九州派的?な流れのなかにある沸き上がってくる衝動にまかせた巨大作品です。
オタ系現代美術作品としても、食玩とは違う、ブツの巨大さに圧倒されますし、
レディメイド系メディアミックス作品としても通常ではあり得ない複雑怪奇なデス様伝説を取り込み、
ハッカーカルチャー的なばかばかしすぎる「ネタ感」と笑いも取り込むことに成功してます。
今までの常識のはるか斜め上を行く、凄まじいやばさ(やってしまった感)。

 

ひょっとしたら、昨日の私はとんでもない場所に立ち会ってしまったのかもしれません。
夢見がわるいはずですよw。

 


 

今回の『福岡アジア美術館 福岡トリエンナーレ2005』 は、
今までの福岡トリエンナーレと異なり、現在進行中のアジアの現代美術を
色々取り入れていて、えらく面白かったです。まさにアジ美ならでは。
巨大クリムゾンが他の作品と違和感無く展示されている状況ってのは凄い!

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